Return of the Obra Dinn の感想
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だいぶ前にクリアしていたのに備忘録記事書くの忘れていたのでせっせと残す巻。
ネタバレしちゃうと作品の楽しみを損なってしまうので大雑把な概要を述べると
乗組員ゼロで遭難して帰ってきた船(オブラディン号)における適切な保険額を算定する為に調査を依頼される主人公。
そんな主人公は誰もいない船内で”船内スケッチの人物特定”、”安否”、"死亡の場合は原因、生存の場合は消息"を乗船名簿と見比べて特定しなければならない。
主人公に与えられた武器は一つ。
死者の形跡に不思議な力を持った懐中時計を用いることで、死ぬ直前の会話を聞き、死んだ直後の切り取られた1場面のみ確認できるのだ。
果たして主人公である貴方は全ての死者の死亡原因を特定することができるか…?
船内スケッチ。下のほうですでに不穏な雰囲気が漂っている。
というゲーム。
プレイヤーの想像力を利用する
まさに死の直前の光景をあらゆる角度から覗き見る。これを見れば死因も一目瞭然だが、殺されているのが(また殺しているのが)誰かまではわからない。
このゲームは切り取られた場面を徹底的に観察して推理する作品だ。
これだけならば既存の推理系ゲームに幾らでもある。
そのあまたの推理系ゲームの中で筆者が秀逸なデザインと感じた要素は
『間をプレイヤーに想像させる構造』である。
これはどういうことか。
前述の通り、プレイヤーは死者の痕跡から死亡前後の状況しか覗きみることしかできない。
生存者のことに関しては、死者の前後状況から描き出される場面から生存していると判断するしかないのである。
この断片情報しか得られない中、死者と死者の間にある物語はプレイヤーの脳内で想像するしかできない。
その上、真相は全員分特定してEDを迎えた後でも確定情報としては判明しないのである。
かといって全てが謎ENDで消化不良のまま終わるという意味ではない。
ちゃんとプレイヤーの頭の中では己の想像であると理解しながらもストーリーが完成しているのである。
故にプレイヤー間で脳内におけるストーリーは細かな部分が異なるだろう。
それでも投げっぱなしENDはなく物語が成立するという点に、今までにないゲーム感を味わうことができた一品だ。
推理系ゲームの難易度設定
どんなゲームでも製作者が苦慮する点として挙げられるのが難易度の設定ではないだろうか。
その点、このゲームは誰でも遊べるようにしたいが歯応えのある内容にもしたいという意思を感じた。
それをたった一つのルールで解決している点には関心した。
そのルールは「正解の3人分の乗船名簿を埋めた時、それは正解であるという確定情報を与える」ことである。
仮に「60人分全員が正解でないと真EDが見れない。また正誤確認手段はEDになるまでわからない」だった場合は相当難易度があがっていたことだろう。
これを上述のルールにしたことで当てずっぽうでは正解に辿り着けない。一方で確証がもてない時でもとりあえず埋めて前進できるという作りになっている。
このゲーム、推論にリアル教養(例えば特定国の人々の有名な特徴)が求められるケースがあるのでゲーム内だけで全て解ける日本人は多くないのではないだろうか。
少なくとも筆者は攻略サイトは一切見なかったが、国名でググって情報確認はした。
多国籍の人間が乗っている船なので死亡前後の会話特徴は恐らく日本人では拾えないものもある。
ただそれがなくとも他情報(最悪消去法を用いて)から船員の特定は可能になっているので安心してほしい。
但し、推論する為の要素及びヒントがゲームの中で完結していないという点においては批判の声もあがるかもしれない。
検索エンジンや攻略サイトがあることを前提に難易度を組んでいそうなゲーム(艦これとか)もあるので現代的ともいえるか。
その他情報・まとめ
・能動的に推理、推論を楽しみたいという方。
・独特のゲームデザインを体験したい人。
・想像力豊かなプレイヤー。
上記に該当する方は楽しめるはず…!
いちおうマイナス面として
・ただ観察する為に画面を凝視しているせいか3D酔いしたことない筆者が初めて酔いました。
・プレイした後に物事がハッキリしないストーリーは嫌だ!
という方は注意。
いちおうプレイ時間は速い人で10時間らしいですが、そこまで頭の回転が速くない筆者は16時間かかりました。